calendar

S M T W T F S
   1234
567891011
12131415161718
19202122232425
262728293031 
<< August 2018 >>

Profile

hagacube
管理人:hagacube
このブログでは、劇場公開時に観た映画、DVD、オンデマンド動画などの映像作品を中心に、音楽の新譜/旧譜、スポーツなどエンターテインメント全般について、複数ライターが極私的な見解を書いています。
◆Twitterはこちら⇒ hagacubeをフォローしましょう

selected entries

categories

archives

Ranking

        

recent comment

recent trackback

すいかエンタ!について。

記事にはネタバレを含むものもありますので、未見の作品や各スポーツなどについて、先に結果などを知りたくない方はご注意ください。

当ブログの運営はSuika Cube Inc.が行っています。
■自由な発想でデジタルコンテンツをプロデュース | Suika Cube Inc.

息もできない



キネマ旬報2010年ランキング堂々1位、映画秘宝2010年映画ランキングでもベスト10入りし、その他の各誌、各評論家のランキングでも軒並み高評価を得た本作。個人的にも2010年ベスト3に入る衝撃的作品だった。

公開当時に映画館で観た直後は内容のエグさ、激烈な暴力描写、役者の入れ込み具合に圧倒され、『オールド・ボーイ』や『親切なクムジャさん』を観たときのような重い気分に支配された。しかしDVDで見直すたびに、俳優たちの細やかな演技、崩壊した家族であってもそこに何がしかのつながりを求める人の心の悲しさや優しさなどが、より強く伝わってくるようになった。

「チンピラが愛(というか人とのリアルな付き合い)に触れて、守るべきものを守るという人生の大切さに気づくのだが、ああ結末は…」という内容と、一人の映画人が監督・脚本・主演をこなし資金集めまで行って作品を世に産み落とした、という状況を重ね合わせると、すでにさまざまな形で言及されているが『竜二』との符号に気づく。ラストシーンの表現こそ違えども、本質的な意味で成就しなかった愛の形を描いているという部分は正しく『竜二』と一致している。

だけれども本作が『竜二』のオマージュであるとかいい意味でのパクリ(プロットの基礎部分だけを拝借して新たな価値を見出したという意味で)であるとか、そういった批評は的外れだと思う。実際にヤン・イクチュンが本作を想起した時点でどのような道筋を経た着想だったのかが重要なのではなく、たとえ『竜二』がどうであれ、『竜二』も『息もできない』も両作とも描かざるをえない状況で描かれた物語であり、人の人生や幸福や不幸は少なからず類似性があるのだという証明に過ぎないからだ。

韓国映画の凄いところは、いまだに人間が人間として“どうあることが幸せなのか”ということを、作り手によって様々な形ではあるが、必死に追い求め高らかに提示しているところだ。そこには“てらい”のないピュアな人間への期待が堂々と込められている。恨み、復讐、暴力で綴られる極限的なハードな描写であっても、そこであがく人間に注がれるのは驚くほど優しい視点なのだ。そこがモラトリアム的であり自己中心的な主人公のささやかな葛藤をこねくり回す日本映画に圧倒的な差をつけている部分ではないだろうか。日本映画だって過去には強烈な力強さを持っていたのだが、現代の状況はそこまでピュアに(いいかえれば脳天気に)人間賛歌を歌い上げるのが難しくなってしまったのかもしれない。文化と経済の発展がすべての幸福を保証するわけではないということだ。

主人公サンフン役のヤン・イクチュンの普段の姿は本作の映像に比べるとずっとノーマルで優しい。映画の中で彼がどれだけ役作りに没頭しているかがうかがい知れる。

またヨニ役のキム・コッピをはじめ登場人物すべてが実にリアルに自分の役を演じている。この役者の意識レベルの高さも韓国映画の美点だ。

暴力を繰り返すことで自らもすり減り、傷つき、自分の気持を救うこともできないサンフンが求めたのは、自分が必要とされていると実感すること。最悪の家庭環境の中でも周りを心配し思いやるヨニは、この凶暴でアンモラルでトラウマにまみれたサンフンの心を少しづつ温め、彼の純粋な優しさを引き出していく。そんな二人が漢江の岸辺で泣くシーンはあまりにも重く美しい。抱える問題がいかに深刻で逃れられないものであっても、人間はなんとか乗り越えて生きて行くのだ。たとえ命を失っても、その思いはまた人に受け継がれ育まれていく。

しかし、ヨニが弟にサンフンの姿を見るラストシーンは、人生がいかに苛烈で過酷なものであるかを鑑賞者の心に深く刻みこむ。人が生きて行くということの不安定さ、もろさ、そしてそうであっても生きていくことでしか辿りつけない幸せを求める人間というものを、じつに深く表現していると思う。

<Raiting>
このジャンルの韓国映画の特定は、はっきりと好き嫌いがわかれると思うし描写も激烈なので誰にでも合うとはいいがたい。しかし本作はそこを我慢してでも観ることで得られるものがとても大きい。ぜひ多くの人にみてほしいと思う。傑作!


<Trailer>


あー
テーマ:DVDマニア
息もできない@ぴあ映画生活

評価:
---
Happinet(SB)(D)
¥ 3,243
(2010-12-03)

評価:
鈴木明夫
ショウゲート
¥ 2,088
(2006-06-23)


コメント
コメントする








   
この記事のトラックバックURL
トラックバック