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hagacube
管理人:hagacube
このブログでは、劇場公開時に観た映画、DVD、オンデマンド動画などの映像作品を中心に、音楽の新譜/旧譜、スポーツなどエンターテインメント全般について、複数ライターが極私的な見解を書いています。
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すいかエンタ!について。

記事にはネタバレを含むものもありますので、未見の作品や各スポーツなどについて、先に結果などを知りたくない方はご注意ください。

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ヤング≒アダルト(Young Adult)

ヤング≒アダルト

まともに考えれば、シャーリーズ・セロン演じる主人公メイビス・ゲイリーに感情移入できたり同情したりできる人は、メイビスのごとく”輝かしい過去”が愛おしくてたまらない少数派だけ。そんな、まったく好感の持てない人物を主人公として据えたことがこの作品のすべて。実に奇妙な作品だ。 

メイビスを自分のことのように感情移入はできないが、「あーいるいる、こういう人」と感じる人は多いはず。しかしメイビスはあらゆる面でぶっ壊れてる。ぶっ壊れ感が凄まじい。それはもう奇人のレベル。彼女はヤングアダルト小説のゴーストライターというだけでなく、彼女自身がヤングアダルトのかたまりだ。年はとっても頭の中は栄光の学生時代の自分のまま。女王様気取りで周りなどお構いなしに突っ走る。

しかし、いくら頑張っても彼女の抱える悲しみは癒せない。過去の自分を周りの環境ごと取り戻すことなんてできないからだ。さんざん好きなように生きてから「あー公務員にでもなって結婚して、安定した普通の生活をしたかったなー」なんて嘆いたってもう遅い。だから大人はなんとか別の方法で現状に折り合いをつける。それが別の前向きな目標であったり、ため息混じりのあきらめだったりするわけだ。

つまり大人なら、メイビスの気持ちは手に取るように分かる。分かるけどどうしようもないことも分かっている。だからメイビスを取り巻く旧友や両親や親戚は、みんなメイビスの扱いに困ってはいるけど、ちゃんと相手はしてくれるのだ。

自己チューなメイビスに対し、ものの道理を説くのがパットン・オズワルト演じるマット。障害者であるマットはあらゆる面でメイビスと対になる存在だ。恐ろしいほどの美貌を持ちながら無軌道な行動を繰り返すメイビスと酷い外見と障害を持ちながらまともな生き方を説くマット。”気がつくとなぜかそこにいる”というマットは、メイビスのもう一つの心、ヤングな自分と葛藤するアダルトな自分だ。マットと口論するメイビスは同時に自分と戦ってもいるわけだ。

しかし、ラストまで観てつくづく思う。年を追うごとに大人になって丸くなっていく人生も悪くはないけど、周りをすべて「糞!」と罵倒しながら「自分は自分!」とスクっと生きていくのもいい生き方だ。「迷惑な大人でもいいじゃないか、どうせ人生1回だし、好きなように生きてやれ!」とちょっと熱くなれる。

しかし面白い作品だ。ジェイソン・ライトマン監督とディアブロ・コーディの組み合わせというだけで期待は大きかったが、それを裏切らない素晴らしいデキだ。思えば同じコーディ脚本の『JUNO』も奇天烈な女の子の奇妙な話だったが、彼らの手にかかると奇人変人の奇行物語がこれほど普通の人間の感覚をシェイクする作品に仕上がるのが本当に凄い。

シャーリーズ・セロンを始め俳優陣も大充実! 自分の美しさがまるで罪とでも言わんばかりの、ある意味『モンスター』よりも自虐的な演技をみせるシャーリーズ・セロンに脱帽! 2回ほどあるヌーブラシーンなんて、もう土下座したくなるほど。愛車がBMW MINIというのが泣かせる。

<Raiting>
満点! ジェイソン・ライトマン監督作品は極端に相性がいいのか『JUNO』『マイレージ・マイライフ』も満点評価だった。何度も観たくなる作品だ。置かれた現状によって受けとり方が変わり、さまざまな見方ができるという点では『ブルー・バレンタイン』に近いかもしれない。


<Trailer>


あー
テーマ:映画館で観た映画
ヤング≒アダルト@ぴあ映画生活

評価:
---
20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン
¥ 1,477
(2010-08-04)


TIME/タイム(In Time)

TIME/タイム

傑作キタコレ! いやー、面白い映画だった。国内外での評判がそれほどよくないのは知っていたが、個人的には強烈にツボにはまった。

まず、ジャスティン・ティンバーレイクの頭の形がいい。これほど完璧なボウズ頭はなかなかお目にかかれない。

街の風景がいい。近未来の話なのだが、スラムゾーンでタイムキーパーが主人公を追い込む雰囲気はまるで『アンタッチャブル』のような風情がある。

クルマが超カッコいい。「造形がイマイチ」とかいってる人も多いが、このカッコよさがわからんとは実にもったいない。タクシーはばっちりスムージングされたリンカーン! タイムキーパーのパトカーはマットブラックのダッジ・チャレンジャー! これ以上ないワルカスタムされたアメリカンビンテージカーに悶絶! しかも主人公ウィル・サラスがチョイスしたのがジャガーEタイプ。なにこのツルッツルのボデ〜〜〜! 音も最高! こいつらがパワースライドかましながらストリートを走りまわるんだぞー! クルマ好きならこれだけでDVDを買う理由がある。

アマンダ・サイフリッドがいい。フレームに収まっているだけで間が持つ超キュートさは異常なレベル。こういう女優はなかなか現れない。

兌換紙幣ではなく兌換時間。このアイデアだけでもう十分面白い! アンドリュー・ニコル監督が『ガタカ』での問題提起を改めて再確認し発展させているテーマ設定も素晴らしい!

欠点は山ほどある。「矛盾点が多い」「深みがない」「これでなにか解決したつもりか?」と言われればそのとおり。アイデアが持つ無限の可能性をたいして掘り下げもせず、「完璧な構図でラストをまとめて一丁あがり、ほらスタイリッシュでしょ?」という軽薄感もたしかにあるっちゃある。しかしそういう欠点と作品の面白さは別。面白ければ欠点なんていくらあってもかまわない。

映画の冒頭でスクリーンにタイトルが出ると、おっ?と思う。原題は『In Time』。時間のお話だから単純に『TIME/タイム』なのではなく、「時間内に」、つまり「間に合うかどうか」が主題だと分かる。

母親の時間切れに”間に合わず”、その悲しみと怒りから、この世を司るシステムに反旗を翻したウィル・サラスが、愛するシルヴィア・ワイスの時間切れを救うに至るまで、とにかく「間に合うかどうか」の積み重ねで物語が構築されてる。

すこし真面目に考えれば、膨大な時間を手に入れた者は時間を獲得する手段としての労働を放棄するわけだから、だれもがなにも生産しない社会になるということだ。金(時間)はあっても買うものがない超ウルトラハイパーインフレだ。そんな社会はあっという間に崩壊するだろう。

社会の不公平さが社会を動かす原動力であり、エントロピーが発生しなければ社会は動きを止め死に至る。つまり社会すべての人間が働かなくても良いほどのお金持ちになることは許されないということだ。そのために現代社会は不公平な世の中の入り口に(建前であっても)「機会均等」という公平さを設置し不満の受け皿としている。「ダメなのはダメなお前の責任だ」というわけだ。

しかし本当の公平さは「人はみな死ぬ」というごくごくあたり前の事実なのだ、ということを本作は突きつけてくる。金持ちは死なず貧乏人は死ぬ、ということでは、もはや不公平感を押し殺すことは不可能だ。

本作の主人公たちの行動を単なるボニー&クライド気取りのアホで、「時間をいくらばら撒いたってなにも解決しないじゃないか」と批判するのは勝手だ。だが、かれらはそのことを社会に気づかせるために行動していると捉えれば、実はこれが唯一効果的なやり方だと気付くはずだ。

ウィルとシルヴィアは、時間を盗んではばら撒く義賊として単純に喜んで行動しているのではなく、体制の崩壊のためのテロを行なっている最中なのだ。貧者に富裕層と同じ富を与えることで一度社会を崩壊させる。そうしなければ強固な社会システムを変えられるわけがない。本作は序章であり、これから長い戦いが続くのである!と、そう考えれば、なかなか奥深い作品じゃないか?!

しかし、その後に成立する社会システムとはいったいどんなものなのだろう。みんながそこそこ労働を分けあって、一様に同じ程度の財産を有する社会が、壮大な実験の結果崩壊したことをすでに知っている我々が、今度は資本主義社会の崩壊の崖っぷちに立たされている。もし本作に続編があるなら、今度はとてつもなく面白く新しい社会システムのアイデアを提示してほしいと思う。

<Raiting>
アイデアがシンプルで、編集のテンポがすこぶるよく、登場人物のキャラが立っていて、俳優陣の造作が見事で、カーチェイスやガンプレイがかっこよく、ストーリーに躊躇がなく、ラストまで一気に突き進む推進力も十分。ジャスティン・ティンバーレイクがイケ好かない、という人以外は楽しく鑑賞できるはず。世界観を含めて久々に全てが好ましい作品。


<Trailer>


あー
テーマ:映画館で観た映画
TIME/タイム@ぴあ映画生活


ヒューゴの不思議な発明(Hugo)

ヒューゴの不思議な発明

『タクシードライバー』『グッドフェローズ』のマーティン・スコセッシ監督が本格3Dファンタジーに挑んだ話題作。さまざまな映画賞で軒並み受賞を果たし、アカデミー賞でも5部門を獲得した。

重鎮でもあるがわりとなんでも撮る監督だけに、3D作品を撮ること自体にはさしたる驚きもなかったが、こちらの想像をはるかに超える映像美! 映画の全てを知り尽くした名匠の手にかかれば、こんなにも素晴らしい3D映像が出来上がるのだ。

スコセッシが映画という文化のすべてにとてつもなく深い愛情を持っていることが伝わってくる内容で、人々がどれだけ映画の持つ力、映像のマジックによって豊かな気持ちにさせられてきたか、歴史をたどりながら追体験できる。

人物設定はよく練りこまれていて、各登場人物がとても生き生きと描かれている。名優ベン・キングズレーが素晴らしいのは当然として、ヒューゴ役のエイサ・バターフィールドや鉄道公安官役のサシャ・バロン・コーエンなど、見事な演技を披露している。ヒットガールのクロエ・グレース・モレッツは、もう子役とは呼べないほど成長していて、ちょっと印象が違ったが、まあまあ及第点。やはり彼女は刺激的な役のほうがいきる。

ひとはそれぞれに何かを喪失し、欠落した自己を抱えて生きている。自分はただの役立たずではないか? 誰からも必要とされていないのではないか? そういう漠然とした不安を感じ四苦八苦しながら暮らしている。親を失い天涯孤独に生きるヒューゴはその悲しみや不安を埋めるために機械じかけの人形の修理に情熱のすべてを注ぐ。

そんなヒューゴが語る。

「機械には無駄な部品などひとつもない。だからもし世界がひとつの機械なら、僕にも君にも役割があるはずだ」

無駄な人間などいない、全ての人間が誰かに必要とされている、誰もが生きる意味を持っている、という強烈なメッセージは、すべての登場人物に当てはまる。それぞれが何かを失い、その何かに囚われて生きている。そしてそれぞれがそれぞれの方法で幸せを掴んでいく。スコセッシの手腕が憎いほど光る。

脚本、演出、役者、映像すべてが完璧に揃った傑作だ。

<Raiting>
3D嫌いにとっても本作の映像は衝撃的だ。腕のある監督が本気で作れば3Dにも意味がある。ただ2Dと比べて感動が割増しになるわけじゃないので、作品の評価に直結するわけではない。見事な傑作だけどベタベタのハートウォーミングストーリーなので、個人的には点数は普通。


<Trailer>


あー
テーマ:映画館で観た映画
ヒューゴの不思議な発明@ぴあ映画生活

評価:
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ワーナー・ホーム・ビデオ
¥ 1,374
(2010-04-21)


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